高性能住宅だとフルハウス タナー家の間取りでも寒くない
子供のころ衝撃だったタナー家の間取り
私が子供の時から好きだった番組フルハウス。ご存じの方もいらっしゃると思います。
コメディでありながら人間愛も大切にした笑いあり涙ありのドラマでした。
毎週土曜日夕方楽しみに観ていました。
ドラマの内容と同じくらい気になったのがタナー家の住宅。玄関開けたらすぐにリビング,大きな吹抜にリビング階段...「海外の家は日本の家とは違うなあ」と幼いながら感じた記憶があります。
実際にはこの住宅はアメリカ サンフランシスコに存在するそうで2016年に約4億円で売買されたとのことでした。
ではこのオープンな間取りで寒い冬でも快適に過ごせるの?
日本と欧米の平均室温の比較
さらに下記のグラフはドイツ(ベルリン)の平均気温です。
1月で平均最低気温-3℃,2月で平均最低気温-2℃とドイツ(ベルリン)の冬の気温は日本の東京はもちろ
ん北陸の冬以上に寒いのです。
日本よりも欧米の方が冬の気温は低いにも関わらず,冬の室温の平均は日本は10℃に対して,欧米の室温の平均は17℃以上という事実です。
これらからも日本の住宅の断熱性のレベルの低さが分かりますね。
G7の中で断熱性能が義務化されていないのは日本だけという事実
日本の住宅の断熱性能レベルが低い要因は断熱性能が義務化されてないことが挙げられます。G7(カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国,米国)で断熱性能が義務化されてない国はなんと日本のみです。アジアではすでに中国や韓国は義務化されています。
ヨーロッパでは賃貸物件で各1戸の部屋が18℃未満になると,オーナーの責任で法律違反で罰せられるほど断熱には厳しいルールになっています。日本では考えられないです。
欧米では家の購入基準は「燃費」が当たり前
ヨーロッパでは家の売買や賃貸は「冬に20℃に保つための必要なエネルギー消費量」が義務化されています。
私たち日本人は車は「燃費」を購入する一つの基準としていますが,ヨーロッパでは家を購入する際も「燃費性能」を重視することが当たり前になっています。「この家の燃費は~kWh/㎡」と各住宅が比較されているのです。
弊社の間取りの自由度
弊社は新築住宅を建てられるお客様には「UA値=0.37W/㎡K以下,C値=0.3c㎡/㎡以下の最低限の住宅性能ということをお約束に掲げています。
こういった高気密高断熱住宅であれば,以下の写真のような住宅設計でも快適に過ごすことができます。
「玄関戸を開けるとすぐにリビング」,「吹抜」,「リビング階段」etc..
ローコスト住宅であれば,「かっこいいけど,冬季の1階は暖気が上に上がって寒い」,「玄関戸からすき間風が入る」などの現象が起こり,全く快適に過ごすことができないです。
高気密高断熱の性能の住宅であればこの間取りではリビングのエアコン(22℃設定)1台で各お部屋22℃~20℃に保つことが可能になります。
玄関から出入りして冷気が入ってきてもすぐに屋内の暖かい空気に馴染んでしまいます。
逆に玄関や廊下に壁がないことや吹抜があることで熱が対流して部屋全体の温度を均一にしてくれるメリットがあります。
「吹抜を作ると冬寒いですよ」とアドバイスする住宅営業マンがおられたら、その会社はローコスト住宅しか建てたことのない会社で間違いないと思います。
タナー家の間取りは理にかなっている
タナー家の1階は実際はテレビ用のセットですが,アメリカの優れた断熱性能基準であればこのようなオープンな間取りでも十分に快適に過ごせます。
これからの日本の住宅
現在日本の既存住宅で「次世代省エネ基準(UA値=0.87W・㎡K)」を満たしている性能の住宅は1割程度と言われています。80年代に作られた家はリフォームなどで現場調査すると無断熱だったということも珍しくありません。
昨今の燃料エネルギー問題で電気・ガス・灯油の値上がりで多くの方が月々の支払いに困っている状況です。知り合いの土建業の社長さんが「聞いてよ。1月電気代11万円だったよ...」,書道の先生は「一人暮らしなのに2月の電気代は5万円だったの」と一昨年には考えられなかった話をよく耳にします。
このような環境の変化により,最近の新築を建てるお客様が「住宅の高断熱化」に対して意識が高くなっているように思います。
国も少しづつ断熱に力を入れています。今まで断熱性能等級1~5だったものを2022年10月から断熱性能等級6,7が追加して,2025年4月以降のすべての新築住宅には断熱性能等級4が「最低限の水準」として義務化されています。
まとめ
今回「フルハウス タナー家の間取り」から断熱について話をしてみました。高気密高断熱住宅はタナー家のようなオープンな間取りの方が各部屋に均一な温度環境に保つことができ,快適に過ごすことができるのです。
この建築業に携わり,幼いころ「海外の家は日本の家とは違うなあ」と感じた違和感の根幹は断熱にあったのだと改めて気づきました。
そしてもしかすると,その高断熱で快適な空間というベースがあるからこそ,タナー家の笑いあり涙ありの素敵な家族愛が映し出されるのかもしれませんね。